無人島 猿島産。自慢のわかめをこれからも−。

横須賀で働く人々や、そこに秘められた想いを通して横須賀の魅力を紹介する特別インタビュー。
先代から50年以上続く、わかめ養殖を絶やさないために。
横須賀・新安浦港で武丸を操業する漁師 譲原 亮さんのこだわりのわかめ作りの裏側に迫る。

絶やしたくない絶品わかめ

漁師を始めたのは結構遅くて、27歳から。まぁ家業だからね。ひいおじいちゃんから始まって、じいちゃん、親父、その後俺。自分の代で潰すわけにはいかないから。でも子供の頃から海は身近だったから、どこかでなりたかったのかもしれないね。もともとうちの父は底引き漁師だったんで、底引き漁を一緒にやってた。でも冬の時期なると水が冷たくなるから、魚が獲れなくなるからね。それで少しでも足しになるようにって、最初は小さくわかめを始めた。
でもわかめ養殖って結構重労働なんですよ。この辺のわかめはすごく大きくなるしね。いつしかわかめをやる漁師さんも減ってきて、生産量はどんどん落ちていった。
50年前に親父たちが始めたわかめ養殖。風味もあって柔らかさも抜群。こんなに美味しいわかめを自分たちの代で絶やしちゃいけないと思って、地元の漁師や飲食店の仲間たちと知恵を絞ってね。少しずつ需要が出てきて、いまは冬の漁はわかめ専門。もっと多くの人にこの豊かな海で育った猿島わかめの美味しさを味わってほしいよね。

天然わかめの胞子から種を作る。

売ってくれる人がどんどん出てきた、そうするとさらにいいわかめ作んないといけないなって。今まで人に頼んでたわかめのタネも、自分でやってみようかと。猿島の周りには、天然わかめがいっぱい生えてる、その天然わかめを潜って採って、その芽かぶから胞子をとって、タネから自分でやるようになった。
自分でタネやりだして10年ぐらいだけど、最初の3年ぐらいは何も出なかった。やり方がちょっと違ったりして全然葉っぱが出てこない。もうそれで終わり。そういうのも最初の何年かありましたよ。でも胞子をとって、自分の手で理想のわかめを育てるのは楽しいよね。

美味しさは伝わる。その喜び。

いま自分がつくってる塩わかめは市場に出荷もするんですよ。横須賀の大きいスーパーにも並んでる。スーパーで知らない人が「このわかめ美味いんだよね」って2、3個買っていくのを見ると、イイね!って。嬉しい瞬間だよね。
あとは、大きくなる前の小さくて若いわかめを早獲れわかめ「さるひめ」として売り出してる。しゃぶしゃぶで扱ってくれるお店を増やしてもらってます。それは年明けすぐから2月の頭まで。自分が作ったこんな小ちゃいわかめを居酒屋さんとかで食べてる人を見るとね、また頑張ろうって気持ちになるよね。地産地消でね、そういう地のものが世に出てくればいいよね。

横須賀の海は素晴らしい

横須賀の海は本当に素晴らしい海。
東京湾はイメージ的に埋め立てで、周りから見るといい海じゃないようだけど、海の中には魚がいっぱいいる。温暖化で年々水温もあがってっきてるけど、東京湾って水温が低いし、水に栄養もある。
だからわかめも相模湾はほとんど育たないけど、東京湾はまだ育つからね。本当に豊かな海だと思うよ。
いま、横須賀っていうと自衛隊とカレーの街になってるけど、魚や野菜もね、三浦半島っていうのは素晴らしいとこなんだっていうのを多くの人に知ってもらいたいです。
その中で、わかめの養殖も盛り上げていきたい。俺のわかめは絶対なんだって言えるように、自分が自信持ってやってる。若い子達にも教えたりしながら一緒にやって、自分で種から作って育てた自慢のわかめなんだっていう子が、もっと増えてくればいいなと思う。

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小川 陸人
YOKOSUKA 軍港めぐり 案内人[小川 陸人さん]
横須賀生まれ、横須賀育ち。
猿島でのアルバイトから雇用され、
現在は『軍港めぐり』の
若き案内人として日々奮闘中。
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下澤 敏也
横須賀ビール[下澤 敏也さん]
横須賀の子どもたちに
上を向いてもらうために、
まずは大人を笑顔に、
という想いを胸ビールを造り続ける
『横須賀ビール』のオーナー。
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